悪魔のようなアナタ【完】
「カエルみたいに跳ねてる奴がいると思ったら、お前か」
「……」
「背が低いと不便だな。ミジンコだから仕方ないか?」
玲士は桃を片手に灯里の前へと回る。
その目は実に愉しげで、灯里は内心で盛大なため息をついた。
悪魔がこういう目をするとき、灯里はろくな目にあったことがない。
「……ちょっと。それ、あたしの桃なんだけど」
「へぇ、そう? どこかに名前でも書いてある?」
「書いてないけど、私が狙ってたのっ!」
「そう? でも早い者勝ちだからね。桃狩りってそういうものでしょ?」
玲士は楽しげに取った桃を灯里の目前に掲げる。
灯里はあまりのことに頬を引き攣らせ、玲士をジッと上目づかいで睨み上げた。
――――やっぱり、ありえない。
こいつが自分を好きなど、絶対にありえない。
やはりこいつは根っからの悪魔だ。
「なに? これが欲しいの?」
「…………」
「欲しいなら、それなりの態度で示してもらわないとね?」