悪魔のようなアナタ【完】
灯里の頬にカッと朱が上る。
玲士は灯里の頭をポンと叩き、踵を返して桃園の入り口の方へと歩いて行く。
灯里はその背を呆然と眺めていたが、口に広がる桃の甘さにはっと我に返った。
――――ひょっとして。
玲士はわざわざ灯里のために桃を取ってくれたのだろうか?
「……っ」
なぜか心臓がバクバクと音を立てて動き始める。
灯里は頬を真っ赤にしたまま俯き、手に残った桃をじっと見つめた……。