悪魔のようなアナタ【完】
昔から晃人はこういったものを選ぶのが得意で、灯里はいつも晃人が選んだものを貰っていた。
イチゴ狩りでもぶどう狩りでも栗拾いでも、『晃くん、美味しそうなの選んで!』と灯里が言うと、晃人は魔法のように幾つか選んで灯里に渡してくれた。
それはどれも美味しく、ハズレがない。
「そこに座れ、灯里」
「うん」
灯里が座ると、晃人はテーブルの桃とプラスチックナイフを手に取って器用な手つきで皮を剥き始めた。
昔、桃狩りやリンゴ狩りに行った時も、晃人はよくこうして灯里に皮を剥いて食べさせてくれた。
灯里は晃人の手元をじっと見つめた。
山寺の件にしても、昨日の足の件にしても……。
やはり晃人にとって自分は手のかかる妹のようなものらしい。
――――ひと言でいえば、超過保護。
けれどどこかでそれを嬉しいと思う自分もいる。
晃人にはもう決めた人がいるし、晃人は取締役で自分はヒラだ。
今となってはこうして一緒のテーブルに座ることすらめったにない。
けれどこうして晃人の優しさに触れると、まるで昔に戻ったような錯覚を覚える。