悪魔のようなアナタ【完】



思わず手を止めた灯里の手から、晃人がそっとフォークを取り上げる。

驚く灯里の視線の先で晃人はフォークで桃を刺した。

そのまま手を伸ばし、灯里の口元に持っていく。


「さあどうぞ、お姫様」

「……っ、晃くん……」


灯里は頬を真っ赤に染めた。

もう子供ではないし、さすがに食べさせてもらうのは恥ずかしい……。

と思った灯里だったが、晃人は笑いながら灯里の口元に桃を突き付けている。


「今更恥ずかしがることはないだろう? 昔はいつもこうしてたんだからな」

「で、でも……」

「ほら食べろ、変色するぞ」


晃人の言葉に、灯里は思い切って口を開いた。

すかさず晃人が灯里の口に桃を放り込む。


灯里の口の中に桃の甘みが芳香と共に広がっていく。

いつかもこうして桃を晃人に食べさせてもらったことを灯里は思い出した。

あれは山梨だったか……。

同じことを思い出したのだろう、晃人も目を和めて灯里を見る。


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