悪魔のようなアナタ【完】



――――数分後。


「あ……あれっ……」


灯里は包丁を片手に山岡課長が打ってくれた生地を切っていた。

できるだけ細く切るようにと言われたが、どう頑張ってもうどんレベルの太さになってしまう。


「まあまあ、太いのも味があっていいんじゃないかな~」


隣で山岡課長がフォローするように言う。

都筑さんと清水さんはテーブルの向かいでネギなどの薬味を切っている。

灯里はジャンケンで負けて蕎麦切り担当になったのだが、なかなかうまくいかない。

と、そこに。


「何それ? うどん?」


通りかかった玲士が灯里の手元を覗き込み、唇の端でクッと笑った。

玲士の班は既に茹で上げ段階に入っているらしく、余裕の表情だ。


灯里はキッと玲士を睨みつけ、再び蕎麦に視線を戻した。


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