悪魔のようなアナタ【完】
晃人の言葉に、玲士は少し眉を上げた。
――――意外な質問だ。
驚いた玲士に晃人は畳み掛けるように続ける。
「君の経歴、君の頭脳からすれば、もっと別の会社を狙えたはずだ。こういっては何だが、君はこんな地方都市の中小企業にいるべき人間じゃない」
「……」
「それに君は毎年、年収の5倍以上の金額を確定申告している。給与の半分を住民税が占めるのは社内では君ぐらいだ」
「……」
「はっきり言ってこの会社に勤めなくても充分生きていけるだろう。なぜ君がこの会社に勤めているのか、理解できない」
晃人は玲士を正面から見据え、言う。
どうやら晃人は玲士の懐事情にも詳しいらしい。
玲士は唇の端でくすりと笑った。
「就業規則では株などの副業は禁止されていないはずですが?」
「ああ、それは別に構わない。俺が聞きたいのは、なぜ君がこの会社にいるのかということだ」