悪魔のようなアナタ【完】
――――あの社員旅行の夜。
ぬるい夜風の中、玲士は衝動のまま灯里に口づけをしてしまった。
灯里に自分の気持ちを知ってほしい。
自分を見て欲しい――――。
想いは一瞬でストッパーを振り切り、灯里へと一直線に向かった。
もし灯里に拒絶されなければ、衝動のままキス以上のことをしてしまったかもしれない。
「……灯里……」
薄紅色の柔らかい唇も、瞳いっぱいに玲士を映した黒い瞳も……。
――――忘れられない。
一回触れてしまうと、もっと触れたくなる。
一度唇の感触を知ってしまったら、何度でも口づけたくなる。
灯里を見るたびに、抱きしめて唇を奪いたいと思ってしまう。
けれど灯里は、あれから何事もなかったかのように玲士に接している。
どうやら自分の気持ちは伝わらなかったらしい。
それとも気付いているのにわざと気付かない振りをしているのか……。