悪魔のようなアナタ【完】
玲士は切ないため息をつき、首を振った。
灯里はそういう演技ができる人間ではない。
恐らく『なかったこと』もしくは『気の迷い』的な扱いになっているのだろう。
どこまで鈍感なんだと思いつつ、そういうところも可愛いと思ってしまう。
灯里を手に入れたいという気持ちはこの数か月で抑えきれないほどに強くなっている。
それは晃人が現れたせいもあるかもしれない。
――――大人の貫録に満ちた男。
灯里が誰よりも頼りにしている、幼馴染……。
「……っ……」
灯里はなぜ自分ではなく晃人に心を許しているのか?
あの男にあって、自分にないものがあるというのだろうか……。
もちろん地位とか幼馴染という関係とか、そういった部分では自分はあの男に敵わないことはわかっている。
しかしそれ以上に、灯里が自分を見ない根本的な理由があるような気がする……。
玲士の胸に切ない痛みが広がっていく。
これまではそんなことを考えたことはなかった。
けれど……。