悪魔のようなアナタ【完】
3.決別
<side.晃人>
週末の午後。
晃人は喫茶店の一角である女と対峙していた。
肩のところで揃えられた艶やかな黒髪に、色白な肌。
ピンクのルージュがひかれた形の良い唇が、今は晃人の前でわなわなと震えている。
九条朝子。30歳。
晃人の婚約者だ。
「……絶対に許さないわ、私」
美しい瞳に涙を滲ませ、朝子は突きつけるように言う。
晃人はひとつ息をつき、はっきりと告げた。
「君が俺を許せない気持ちはわかっている。……婚約破棄の慰謝料は払う。弁護士を通して請求してくれ」
「なんで……? なんでなの、晃人……」
「すまない。だがもう、これ以上君の婚約者でいることはできない。例え君と結婚したとしても、君を不幸にするのは目に見えている」