悪魔のようなアナタ【完】
一時間後。
喫茶店を出た晃人は駅の方へと歩き出した。
秋風が街路に植えられた木々を揺らし、枯葉を巻き上げて吹き過ぎていく。
朝子を傷つけてしまったことに対し、良心の呵責はある。
しかし後悔はない。
もし灯里と再会しても心が動かないほど朝子を愛していれば、晃人は朝子と結婚しただろう。
どんな出会いがあっても見向きもせず、愛を誓える相手。
それほどの想いでなければ、将来の約束はできない……。
一年前の自分の浅はかさが身に染みる。
もっと早くこのことに気付いていれば、朝子を傷つけずに済んだ。
「……すまない、朝子」