悪魔のようなアナタ【完】
定時後。
灯里の携帯にブルルッという振動とともにメールが届いた。
晃人だ。
『今日の夜、時間があれば一緒に夕飯にでも行かないか?』
晃人とは8月末の社員旅行で話して以来、あまり話せていない。
晃人は普段は会議やら出張やらでほとんど社内にいない。
たまにメールは来るが、直接会って話したのは社員旅行が最後だ。
今日はこの後、特に用事はない。
灯里は手早く了解の返信を送って携帯を閉じた。
薄手のコートを着、バッグに携帯を放り込む。
そのとき。
「灯里」
背後から響いた低いテノールの声に灯里はハッと振り返った。
見ると、玲士が廊下の向こうからノートパソコンを片手に歩いてくる。
灯里は急いでバッグを手にして帰ろうとしたが、その行く手を悪魔が阻んだ。