悪魔のようなアナタ【完】
5分後。
店員がお盆にグラスを乗せて戻ってきた。
「ミモザとジンフィズでございます」
店員は慣れた様子でミモザを灯里の前に、ジンフィズを晃人の前に置く。
晃人はカクテルを持ってきた店員に手早く料理を注文した。
店員が去ったところで、二人はそれぞれグラスを持ち上げた。
「お疲れ」
カチンとグラスの間に小さな音が響く。
灯里は晃人が選んでくれたミモザというカクテルを一口飲んだ。
シャンパンをオレンジで割ったそのカクテルは度数も高すぎず、オレンジのフルーティな香りとシャンパンの香りが相まってとても美味しい。
「……美味しい……」
思わず呟いた灯里の顔を、晃人はくすりと笑って覗き込む。
精悍な頬も、形の良い唇も、すっと伸びた鼻筋も……。
昔からずっと格好いいと思ってはいたが、こうして近くで見ると改めてそう思う。