悪魔のようなアナタ【完】
――――三時間後。
店を出た二人は海岸を歩いていた。
海岸は店から10分ほど歩いたところにあり、港の岸壁を歩くと途中から砂浜に変わる。
ここは昔、よく二人で遊びに来ていた海岸だ。
魚をとったり、貝がらを探したり……。
遊んで砂まみれになった灯里を、晃人はよく近くの水道で頭から爪先まで洗ってくれた。
灯里は夜闇に沈む海岸を見渡した。
あの頃は全て砂の海岸だったが、今はその1/3ほどにテトラポットが置かれている。
数年前から波の浸食が激しく砂浜が減ってきているらしい。
「昔はテトラポットなんてなかったのにね……」
灯里が呟くと、隣を歩いていた晃人もああと頷いた。
「この辺りはどんどん浸食されているらしいな。あと5年もすればこの砂浜もなくなるのかもしれない」
「なんだか寂しいね……」
目を伏せた灯里の肩を、晃人がそっと抱いた。
晃人のブラックティーの香りが灯里の鼻先をかすめる。
そのまま二人で、ゆっくりと海岸を歩きだす。