悪魔のようなアナタ【完】



――――三時間後。


店を出た二人は海岸を歩いていた。

海岸は店から10分ほど歩いたところにあり、港の岸壁を歩くと途中から砂浜に変わる。


ここは昔、よく二人で遊びに来ていた海岸だ。

魚をとったり、貝がらを探したり……。

遊んで砂まみれになった灯里を、晃人はよく近くの水道で頭から爪先まで洗ってくれた。


灯里は夜闇に沈む海岸を見渡した。

あの頃は全て砂の海岸だったが、今はその1/3ほどにテトラポットが置かれている。

数年前から波の浸食が激しく砂浜が減ってきているらしい。


「昔はテトラポットなんてなかったのにね……」


灯里が呟くと、隣を歩いていた晃人もああと頷いた。


「この辺りはどんどん浸食されているらしいな。あと5年もすればこの砂浜もなくなるのかもしれない」

「なんだか寂しいね……」


目を伏せた灯里の肩を、晃人がそっと抱いた。

晃人のブラックティーの香りが灯里の鼻先をかすめる。

そのまま二人で、ゆっくりと海岸を歩きだす。

< 256 / 350 >

この作品をシェア

pagetop