悪魔のようなアナタ【完】



「ねぇ晃くん。あの岩場、覚えてる?」

「ああ……あれか」


灯里が指差した先に岩がゴツゴツした小さな岩場がある。


小学校低学年の頃、灯里は小魚を取ろうと岩場によじ登った。

しかしそこに波が押し寄せ、岩場から転落してしまった。

晃人は海に落ちた灯里を慌てて助け上げ、岸壁に戻ってすりむけた膝の手当てをしてくれた。

――――そう、この間の展示会に晃人に助けてもらったように……。


「あたし、晃くんに本当にいろいろ迷惑かけてたね……」

「灯里……」

「いろいろしてもらったのに、何にも恩返しできてないね」


灯里は目を伏せ、少し笑った。

あの頃は、大人になったら晃人にいろいろ恩返ししようと思っていた。

けれど灯里が大人になる前に、晃人は灯里の傍を離れ……。

こうして再会した今も、晃人に恩返しをするどころかさらに迷惑をかけている。


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