悪魔のようなアナタ【完】
俯いた灯里の肩を晃人がぐいと抱き寄せる。
昔と変わらぬぬくもりに灯里の心が解けていく。
やがて、しばしの沈黙の後。
灯里の耳に晃人の優しい声が忍び込んできた。
「迷惑だなんて、思ってないさ」
「晃くん……」
「お前の世話を焼くのは、昔から俺の趣味みたいなものだ」
晃人の言葉に灯里はくすりと笑った。
晃人にしてみればそうなのかもしれない。
父のように兄のように、晃人はいつでも灯里を護り導いてくれた。
けれどもう、それに甘えてはいけないのだ。
俯いた灯里の隣で、晃人はふいに足を止めた。
ん?と顔を向けた灯里に、晃人はいつになく真剣な声で言う。
「俺は、お前が傍にいてくれるだけでいい。お前が引け目を感じる必要はない」
「晃くん……?」
「俺がしたくてしていることだ。……昔も、今も、これからも。お前の一番傍にいるのは俺でありたい」