悪魔のようなアナタ【完】
晃人は灯里の肩からそっと右手をはずし、灯里に見せた。
前に見たときは薬指に銀の指輪があったのだが、今はない。
灯里はコクリと息を飲んだ。
――――晃人は本気だ。
衝撃と困惑が一気に胸に押し寄せる。
灯里は晃人を振り仰いだ。
「え……、そ、その……」
「今までは幼馴染としてお前に接していたが、これからは遠慮しない。一人の男としてお前に見てもらえるように、そういうつもりで接していく」
「……っ」
「お前を困らせたいわけじゃない。……けれどもう、俺も限界だ。もうこれ以上、ただの幼馴染でいることはできない」
晃人は言い、灯里の背に腕を回して抱き寄せた。
昔の優しい抱擁とは違う、奪うような力強い抱擁に灯里は息を飲んだ。
驚いて顔を上げた灯里の目前に晃人の切れ長の瞳が映る。
あっと思う間もなく顎を掬われ、そして……。
……形の良いしっとりとした晃人の唇が、灯里の唇に重なった。
温かく柔らかな感触に、灯里はなすすべもなく硬直した。
晃人の想いが唇越しに灯里に伝わる。
――――もう幼馴染ではいられない。