悪魔のようなアナタ【完】
やがてそっと唇が外され、甘く掠れた声が灯里の耳に忍び込む。
「俺はずっと昔から……お前を愛してた」
「……」
「お前だけが、大事だった。俺をこんな気持ちにさせるのはお前だけだ」
昔から聞き慣れたバリトンの声に、今は大人の官能的な甘さが混じっている。
腰が砕けそうなその声に、灯里は自分の心が噛み砕かれるような気がした。
――――まるで夢の中にいるみたいだ。
晃人の温かさを全身で感じているのに、現実と思えない……。
「返事は急がない。待つから、ゆっくり考えて欲しい」
「……っ」
「寒くなってきたな。風邪をひくといけない、上に戻ろう」
晃人は静かに腕を解き、灯里の肩に腕を回した。
そのままエスコートするように海岸をゆっくりと歩き出す。
灯里は真っ白になった頭のまま、晃人に肩を抱かれ夜の砂浜を歩いて行った。