悪魔のようなアナタ【完】
八章
1.わからないとは言わせない
<side.玲士>
玲士は会議室から戻る途中、電機設備課の自席に座る灯里の姿に足を止めた。
灯里は心ここにあらずといった様子でぼうっとパソコンを見つめている。
――――昨日の定時後。
資産台帳の修正をしていた灯里は何かに急いでいるようだった。
用事があると言っていたが、多分あの男だろう。
あの男の元へなど行かせたくない、ずっと自分の傍に縛りつけておきたい……。
しかし自分にそんなことを言う資格はない。
胸に広がる黒い嫉妬を押し殺し、玲士は急いだ様子で帰る灯里を見送った。
そして今日、灯里は明らかに上の空だ。
魂が半分抜けかかっていると言ってもいい。
――――昨日、二人の間に何かあったことは確かだ。
灯里を捕まえて何があったか問い質したいが、灯里と玲士はそんな関係ではない。
用事がなければメールすらできない玲士に比べ、灯里と晃人は定時後に食事に行くほどの仲だ。
それを思うたび、玲士は胸を掻き毟られるような思いがする。
晃人との差は広がる一方だ。