悪魔のようなアナタ【完】
「お前が作った決算短信のデータ。あれ、単位が違うんだけど」
「……へ?」
「円単位じゃなくて、千円単位。ゼロ一つの違いで株価が上下するからちゃんと確認しといて?」
玲士はどことなく疲れたような声で言う。
決算短信発表を控え、ここのところ経営企画室も相当忙しいらしい。
そんな中でも玲士は灯里が作った資料をちゃんとチェックしてくれている。
そのことはありがたいと思うのだが、素直に感謝の言葉が出てこないのは灯里のせいではない。
「お前、資料は作れるようになったけど、細かいところが抜けてるよね」
「……うっ……」
「ミジンコから多少進化したかと思ったけど、まだミトコンドリアには程遠いか……」
「だから何で微生物なのよ……」
げんなりした灯里に玲士はくすりと笑う。
確かに玲士のレベルからしたら灯里はミジンコレベルなのかもしれない。
仕事の範囲が広がってきた今なら、玲士の凄さが理解できる。
けれど。