悪魔のようなアナタ【完】

2.事件




月曜。

決算短信の発表を翌日に控え、社内は慌ただしさを増している。


灯里はぼーっとした顔でキーボードを叩いていた。

手は動いてはいるが、頭の中は別のことでいっぱいだ。


「……ねぇ灯里ちゃん、ずっと同じ文章打ってない?」

「あ……」


横から覗き込んだ山岡課長がこそっと灯里に言う。

灯里はアハハと笑い、素早く間違った部分を消去した。

……今の自分は全く使い物になってない。


このままではまずいと思うがどうすればよいのかわからない。

灯里は内心ではぁぁとため息をつきキーボードを打つ手を止めた。

その時。


「や、や、山岡課長っ」


白髪交じりの痩せた男性が資料を片手に山岡課長の方に走ってくる。

男性の名は沢井。

経営企画室の室長で玲士の直属の上司だ。

いつも落ち着いている沢井室長がこんな様子で駆け込んでくるのは珍しい。


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