悪魔のようなアナタ【完】
「どうかしましたか?」
「じ、実はその。さっき明日発表する決算短信が印刷会社から納品されたのですが、電機設備課の数値がおかしくなってて……」
「ええっ!?」
山岡課長はすっとんきょうな声を上げた。
灯里も驚き、はっと顔を上げる。
山岡課長は慌てた様子で立ち上がり、沢井室長が持ってきた資料を覗き込んだ。
「ほら、ここの売上ですが、2千万が20万になってます」
「ええっ? ここはぼくも部長も確認しましたよ!?」
「ええ、経営企画室でも経理部でも確認しました。でもなぜか数値が違ってるんです」
沢井室長の言葉に、灯里と山岡課長は蒼白な顔になった。
先週の玲士の言葉が脳裏に蘇る。
『ゼロ一つの違いで株価が上下するから、ちゃんと確認しといて?』
株価に影響……。
さーっと灯里の顔から血の気が引く。
呆然とする灯里の前で山岡課長は慌てて机の上の実績ファイルを取った。
「まずは役員に報告だ。沢井室長、一緒に来てもらってもいいですか?」
「あ、はい!」
「灯里ちゃんも来て。緊急事態だからね!」
山岡課長の声に、灯里も慌てて頷いた。
灯里は急いで筆記用具を取り上げ、二人の後に続いて三階へと向かった……。