悪魔のようなアナタ【完】
午後4時。
1Fの端にある会議室に全社員が集合した。
会議室はさほど広くないため、灯里が入ろうとした時には既に人で溢れていた。
会議室の中はもともと机が並んでいたが、全員入らないことを想定したらしく既に廊下に出されている。
「すごい人だな……」
会議室に入ろうとした灯里はあまりの人の多さに思わず足を止めた。
この中に入るのは至難の業だ。
どうしようと入り口で躊躇していた灯里だったが、突然後ろから肩を押されてはっと顔を上げた。
背後からふっと漂う甘いウッドノートの香りに、なぜか胸がドキリとする。
社内でこの香りを使っているのは、……玲士だけだ。
「そんなとこに立たれると邪魔なんだけど?」
「……じゃあお先にどうぞ」
横に避けようとした灯里だったが、後ろから肩をがっしりと掴まれて動けない。
玲士は肩を掴んだまま問答無用でぐいと灯里を部屋の中に押した。
「……っ!」
「はい、邪魔、邪魔。中に入るよ」