悪魔のようなアナタ【完】
5.男としての深み
<side.玲士>
夕刻。
取締役会に議事録担当として出席した玲士は、会議の後そのまま会議室でレコーダーの確認を行っていた。
だいたいの内容は既に会議中にメモを取っているが、レコーダーの内容を確認して足りない部分を補完する。
イアホンで半分ほど聞き終わった時、会議室のドアが開いて一人の男が入ってきた。
紺色のスーツを着こなした男。
晃人だ。
晃人は玲士の向かいに座り、机に肘をついて指を組んだ。
「何か用でしょうか?」
玲士はイアホンを取り、晃人に向き直った。
訝しむ玲士に晃人はうっすらと笑い、口を開く。
「水澤。今朝の人事異動は見たか?」
「ええ」
玲士は頷き、机の上の資料を手早くまとめて脇によけた。