悪魔のようなアナタ【完】
心のどこかではわかっていた。
例え灯里を手に入れても、ここにいる限り、その先はない。
押し黙った玲士に晃人は続ける。
「君がこの会社に入った理由は、君のそのどこか厭世的な部分と関係があるのかもしれないが……」
「……」
「灯里は勘がいい。君は人生を本気で生きていない。無意識のうちにそれを見抜いている」
「……」
「だから君がいくら想いを寄せても、灯里が今の君を受け入れることはないだろう」
晃人の言葉は玲士の心を正面から突き刺した。
突き刺された部分から痛みが広がり、玲士の心を覆っていく。
まさか、ここまで晃人に見抜かれているとは思わなかった。
灯里は自分を悪魔というが、この男の方がよほど悪魔だ。
『晃人にあって自分にないもの』。
玲士は無意識のうちに唇を噛みしめた。
ずっとおぼろげだったそれを今、はっきりとした形で認識する。