悪魔のようなアナタ【完】
30分後。
灯里は化粧室で一息ついていた。
料理はだいたい食べ尽くし、会場にいてもやることがない。
灯里は軽く化粧直しをし、襟元やスーツの裾を整えて化粧室を出た。
ちらりと会場の中を見ると晃人の周りにはまだ人だかりができている。
忍村とコネを作りたいと思っている会社は想像以上に多いようだ。
課長も直帰でいいと言っていたし、そろそろ上がろうか……。
ここから駅までどう行けばいいのかわからないが、大通りに出れば何とかなるだろう。
と出口の方に足を向けた、その時。
ピピピと携帯が鳴った。
慌てて携帯に出た灯里の耳に飛び込んできたのは……。
『灯里、どこにいる?』
低いバリトンの声。
晃人だ。
見ると、会場の方から晃人が携帯を片手に歩み寄ってくる。
やがて晃人の一重の瞳が灯里の姿を捉えた。