悪魔のようなアナタ【完】
「どこに行っていた? 帰ったかと思ったぞ」
晃人は灯里の前で足を止め、携帯を切った。
携帯をスーツの胸ポケットに突っ込み、灯里を見下ろす。
「山岡課長は?」
「急ぎの用で、もう出ました」
「社用車で行ったのか?」
「はい」
灯里が軽く頷くと、晃人はふむと灯里を見た。
「そうか。では吉倉、一緒に帰ろう」
「え?」
「お前、足がないだろう? ここから最寄りの駅まで徒歩30分だ、しかもバスはない」
晃人の言葉に灯里は目を見開いた。
市街地にあるのでてっきり電車やバスが近くを走っているものだと思っていたのだが……。
「で、でも……」
「遠慮するな。行くぞ」