悪魔のようなアナタ【完】
3.大人のデート
駐車場に着くと、晃人は後部座席のドアを開けて手にしていたビジネスバッグを放った。
そのまま助手席の横に回り、慣れた様子でドアを開く。
「さあ乗れ」
「……」
灯里は思わずまじまじと晃人を見上げてしまった。
晃人の車に乗るのは初めてな上、こんな風にエスコートされたこともない。
きっと晃人はこれまで付き合った女性を同じようにエスコートしていたんだろうなと思うと、やはり大人だなと思う反面、昔とは違うんだなとしみじみ思う。
灯里は礼を言い、恐る恐る助手席に座った。
シートはクッション性がよくとても座り心地がいい。
車の中は黒褐色で統一され、芳香剤だろうか、心地良い香りが仄かに漂っている。
「お前、俺の車に乗るのは初めてだったな?」
「そ、そうだね……」
そもそも男性の車に乗る機会すらほとんどない。
ましてやこんな高級な雰囲気の車に乗るのは初めてだ。