悪魔のようなアナタ【完】
一時間後。
二人は会社がある街から車で30分ほど行ったところにあるカフェレストランにいた。
レストランは山の中腹にあり、周りを森で囲まれた閑静な場所にある。
店内はログハウス的な造りであちこちに野の花や蘭などの鉢植えが飾られ、ナチュラルで落ち着いた雰囲気が漂っている。
窓の外は既に陽が沈み、夕焼けが街並みを橙色に染めている。
『軽食でいいよ』と言った灯里を晃人はこの見晴らしの良いレストランに連れてきてくれた。
「いいレストランだね~……」
「もう少し遅い時間になると酒も出してくれる。俺は車だから飲めないけどな」
「晃くんはお酒強いの? 煙草はするの?」
灯里は向かいに座った晃人を見、聞いてみた。
10年前に別れた時、晃人は既に成人していたが酒も煙草もしていなかった気がする。
晃人は近くを通りかかったウエイターに手早く飲み物と料理を頼み、灯里に向き直った。
大人びた微笑みを浮かべ、灯里を見る。
「酒は多少嗜むが、ザルというわけじゃない。煙草はしない」
「へぇ……」
「健康面で、というより煙を吸うのがどうもダメでな」