悪魔のようなアナタ【完】



晃人の言葉に灯里は首を傾げた。

煙を吸うのがダメ、とは……。

晃人は苦笑し、グラスの水を一口飲んで続ける。


「アメリカにいた頃に友人と一緒に一度だけチャレンジしてみたことがある。だがむせてしまって死ぬかと思った」

「……」

「あれから煙草に触れたことはない。あれは俺にとっては拷問だ」


その時のことを思い出したのだろうか、晃人は眉を顰めて言う。

灯里は思わず笑った。


晃人は幼い頃からずっと水泳をしてきたため、他の人に比べて肺活量がある。

むせたのはそのためだろう。

自分の知らない10年の間に晃人にもいろいろあったらしい。

とまじまじ見つめる灯里に晃人は訊ねる。


「お前は? 酒や煙草はするのか?」

「ううん、全然。お酒はあまり強くないし、煙草は匂いがダメなの」


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