悪魔のようなアナタ【完】
あの休憩室でのキス、そして告白……。
けれどまさかあのことを晃人に言う訳にもいかない。
灯里は視線をそらし、無意識のうちに口元を手で覆った。
そんな灯里を晃人の瞳が射るように見つめる。
やがて。
晃人は目元を緩め、くすりと笑った。
その顔は笑っているが、目にはどこか剣呑な光が宿っている。
「……なるほど、な」
「え?」
「わかりやすいな、お前は。……お前に隠し事は向いてない。特に俺の前では、な」
晃人の言葉は語尾が掠れてよく聞き取れない。
首を傾げた灯里に、晃人は目を細めて愉しげに笑う。
その笑みは10年前と一見同じだが、漂う雰囲気がなんとなく違う。
灯里は内心で訝しみつつ、テーブルの隅に置かれたドレッシングに手を伸ばした……。