悪魔のようなアナタ【完】
晃人は灯里の前に立ち、頭の先からつま先までじっと見下ろした。
その視線の先で灯里はぴしりと固まっていた。
――――10年ぶりの再会。
別人のようにカッコ良くなった晃人に比べ、自分は子供の頃とあまり変わらない風貌だ。
しかも晃人は取締役で、自分はヒラ社員。
かつては隣同士だったのに今は天と地ほどに遠い。
昔は『晃くんっ』とすぐに飛びついたのに、今は言葉一つ出すことができない。
晃人はそんな灯里をまじまじと見つめ、目を細めて言う。
「変わらないな、お前は」
「……晃くん……」
「まさかお前がこの会社にいるとはな。この間の集会の時、かなり驚いたぞ?」
どうやら晃人もあの時灯里に気付いていたらしい。
まるでそうは見えなかったのだが……。
何と言えばいいのかわからない灯里に晃人は優しく笑った。
あの頃よりだいぶ精悍で大人っぽい顔つきになってはいるが、微笑みは変わらない。
――――小さいころから親しんできた、懐かしい笑顔。