悪魔のようなアナタ【完】
「……キスマークは、ないね」
掠れた声と共に玲士の唇が鎖骨に触れる。
唇はゆっくりと下に降り、やがて白い膨らみに触れた。
紅い花を数個散らしたところで玲士の指がボタンに掛かり、手早く戻していく。
「……あ、あんた……」
灯里は衝撃のあまり硬直していた。
一体何が起こったのかわからない。
いつ人が入ってくるかもわからない、こんな場所で……。
呆然としていた灯里の胸に、しだいにふつふつと怒りが湧き上がる。
灯里はキッと玲士を見上げ、口を開きかけた。
が。
「……水澤くん?」
玲士はふっとその長い睫毛を伏せ、小さく息をついた。
そのまますっと灯里の頬に指を伸ばし、優しく触れる。
そして続いた言葉に灯里は息を飲んだ。
「ね、灯里。……灯里はどっちが好きなの? あいつ? それともおれ?」