悪魔のようなアナタ【完】



指を伸ばそうとした玲士の手を避け、灯里は慌てて携帯を閉じた。

晃人からだとバレるといろいろ面倒なことになる。

晃人と幼馴染だなどと知れたら下手したら脅されるかもしれない。

灯里は誤魔化すように慌てて言った。


「そっ、そうよ。あたしにも一人や二人、メールくれる男の人がいるんだからねっ」

「……へぇ。そうなんだ?」


玲士のテノールの声が氷の冷やかさを帯び、灯里の耳を打つ。

その透明感のある美しい瞳は今や氷のように冷たい。

その瞳に気圧されそうになりながらも、灯里は背筋を伸ばして立ち上がった。


「じゃあねっ」


ここにいると墓穴を掘りそうで怖い。

灯里は玲士を振り返ることなく逃げるように休憩室を出た……。


< 39 / 350 >

この作品をシェア

pagetop