悪魔のようなアナタ【完】
「課長は直帰か~。私も今日は早く上がろっと」
とウキウキしていた灯里だったが。
背後に只ならぬ気配を感じ、その笑みは凍りついた。
「楽しそうだね」
と後ろから聞こえるテノールの声にぴしりと灯里の背が固まる。
恐る恐る振り返った灯里の視線の先に若い男が資料を片手に立っていた。
その男を瞳に映した瞬間、灯里の顔が思いきり引き攣った。
ウキウキした雰囲気はどこへやら、まるで悪魔にでも遭遇したかのような表情になる。
「っ、水澤くん……」
「お前にプレゼント。……ハイ、これ。今日中によろしく」
男は言いながら手にしていた書類を突き出す。
灯里は突きつけられた書類から思わず目を背けようとしたが、男はクスリと笑い腕を伸ばしてさらに書類を突きつける。
「おれが直々に持ってきてやったのに、なに? その態度」
「……頼んでないし」
「あと3秒で取らないと、お前の胸元にコレ突っ込むよ?」