悪魔のようなアナタ【完】
晃人はにこりと笑い、通りかかったウェイターに二人分の飲み物を注文した。
その大人びた笑顔は昔見ていたものと変わらない。
――――雰囲気や格好は変わったけれど、中身は変わらない。
そう思うとどこかほっとする。
見つめる灯里に晃人は懐かしげに目を細めて続ける。
「それで、お前はいつからあの会社に勤めているんだ?」
「3年前に新卒で入ってからずっと。部署もずっと同じ」
「そうか。電機設備課だったな。企業にエアコンとかを卸してる部署だな?」
既に晃人は社内の部署についてはチェック済みらしい。
頷く灯里に晃人は続けた。
「俺は大学を出た後、忍村の本社でずっと働いていた。叔父が忍村の会長で、その関係で今回、忍村商事の取締役になることになった」
「忍村って……じゃあ、引っ越したのも?」
「ああ。俺の親父は忍村の代表取締役だ。海外事業が専門で、10年前にアメリカに赴任して5年前に日本に戻って取締役になった」
「じゃあ晃くんも、アメリカに行ってたの?」
「そう。10年前、大学を出たあと俺は親父とともにアメリカに渡って忍村のアメリカ事業部に入った。で、5年前に日本に戻ってきた」