悪魔のようなアナタ【完】
「いや、結婚はまだだが、付き合っている人はいる」
「そうなんだ」
「付き合って一年ぐらいかな。来年の年明けに入籍する予定だ」
晃人は穏やかに笑いながら言う。
灯里はへぇぇと頷いた。
どんな人か気にはなるが、あまり突っ込んで聞くのも良くないだろう。
しかし晃人が結婚とは……。
確かに晃人の年齢を考えれば結婚してもおかしくはない。
しかもこのルックスで取締役となれば相手がいない方がおかしい。
ちょっと寂しいような気もするが、こればかりは個人の都合だ。
灯里はくすりと笑った。
「いいなあ。私も相手が欲しいよ」
「……いないのか? お前」
「いないよ。大学も女子大だったしね。いつかできるといいんだけどな~」
はぁとため息をつきカフェオレを飲む灯里を、晃人が意外そうな目で見る。
その視線になにか引っかかるものを感じて灯里は顔を上げた。
が、晃人はすぐに視線を逸らしていつもの表情に戻る。