悪魔のようなアナタ【完】

3.新しい挑戦




6月中旬。


株主総会を月末に控え、社内は慌ただしさを増していた。

経理部や経営企画室の中を書類が飛び交い、度重なる打ち合わせで廊下を行き来する社員が増えている。


「3階は大変そうだね~」


山岡課長がお茶を飲みながらぼんやりと呟く。

その向かいでキーボードを叩きながら、灯里はそうですねーと相槌を打った。

経理部や経営企画室は忙しいが、この時期の商事部はさほど忙しくない。

商事部の忙しさのピークは年度末を迎える3月だ。


「そういえばね。今日の夕方、部長から話があるらしいよ?」

「へ? 何のですか?」

「ホラ、7月に展示会があるじゃない? その件じゃないかな」


商事部では毎年、7月に東京で行われる展示会に出展している。

出しているのは主に商事部で取り扱っている企業向けのエアコンや電機機器だ。

灯里も毎年この展示会に説明員として参加している。


「そっかー、もうすぐそんな時期なんですね~」

「ぼちぼち資料も作らないとならないな。今年はどうするかな……」


山岡課長は生え際の後退した頭を掻き、ずずっとお茶を飲む。

灯里はその横顔をしばし眺めた後、パソコンに視線を戻した。


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