悪魔のようなアナタ【完】
「では早速。7月の電機産業展の件ですが、今年のコンセプトはどうしましょうか?」
「ちなみに去年、一昨年のコンセプトは何だったのですか?」
晃人は丁寧な口調で真木に聞く。
取締役と言えど社歴は真木の方が長い。
経験者を立てる晃人は他の管理職の間でも評判は上々のようだ。
「去年は『イノベーション』、その前は『エコ』でしたね」
「そうですか」
うーむと晃人は腕を組んで考え込む。
山岡は持ってきた資料をパラパラとめくりながら簡単に説明した。
「去年は『イノベーション』でしたので、既存の商品に新しい技術を加え、購買層を広げることに重点を置きました」
「なるほど」
「その前は『エコ』でしたので、ランニングコスト等に重点を置いてアピールしました」
「ランニングコスト、か……」
晃人はしばし資料を眺めた後、資料のある一点を指差した。
その鋭い眼差しはまさに『デキる男』という感じだ。