悪魔のようなアナタ【完】
「デフレの中ではランニングコストなど、経費面が重要視されるでしょう。しかし今年は少し明るい兆しも見えてきています」
「確かに。日経平均も上がってきましたからね」
「であれば、今年は守りではなく攻めに出てもいいかもしれません。『付加価値の創造』などはどうでしょうか?」
晃人の言葉に真木と山岡がふむふむと頷く。
灯里は何のことやらさっぱりだが、話は進んでいるらしい。
「機能やスペックという『機能的価値』だけでなく、ユーザーのこだわりを反映した商品を提供する、という感じでしょうか?」
「なるほど。うちの部署だと会社相手なので機械的に売りさばいてしまいがちですが、ユーザーの意見を聞き、取り入れるという試みは新鮮で良いですね」
なるほどといった表情で二人は頷いている。
灯里は無言で会話を聞いていたが、ふいに向けられた視線にびくっと背筋を伸ばした。
「では吉倉くん。君、資料をまとめてくれないか?」
「え?」
晃人の言葉に灯里は思わず間抜けな返事をしてしまった。
ぽかんとする灯里を晃人は真面目な顔で見る。