悪魔のようなアナタ【完】
4.悪魔と幼馴染
とは言ったものの……。
自席に戻った後、そういった資料を作ったことがない灯里はパソコンの前で頭を抱えた。
そもそも何をどう作ればよいのかわからない。
『付加価値の創造』とのことだが、その意味すら良くわかっていない。
「うーん……」
と首をひねったとき。
灯里の目の端に長身の男の姿が映った。
玲士だ。
書類を手にしているところを見るとどうやら別の課に行く途中らしい。
「…………」
経営会議や取締役会で使う資料を日々作っている玲士は、いわば資料作りのプロだ。
玲士に聞けば何か資料作りのヒントが得られるかもしれない。
しかし。
『これは貸しだ。いずれ倍にして返してもらうよ?』
いつかのレストランでの悪魔の微笑みが脳裏に浮かぶ。
――――これ以上、あの悪魔に貸しを作りたくはない。
灯里は葛藤しつつ、パソコンの画面に再び視線を戻した……。