悪魔のようなアナタ【完】



玲士は社内では『氷の王子』と呼ばれている。

理由は簡単だ。

――――怜悧・冷静・冷徹。

ひたすら冷たい感じのそれらの言葉が彼の性格を如実に表しているからだ。

もちろん上司や先輩に対してはそれなりの態度で接しているが同期や年下には容赦なく、特に灯里に対してはさらに『冷酷』が加わる。

灯里にしてみれば氷どころかブリザードだ。


「冗談でしょ……」


せっかく定時で上がれると思ったのに、はっきり言って嫌がらせとしか思えない。

灯里はがっくりと肩を落とし、うぅと呻いた。

あの薄ら笑いが心底憎たらしい。


「あーもう! とっとと片づけて早く帰るんだからっ」


灯里はデスクに座り、いつになく荒々しい手付きでノートパソコンを開いた……。


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