悪魔のようなアナタ【完】



「……誰? 『晃くん』って」


ブリザードのような声が響き、灯里ははっと顔を上げた。

見ると。

玲士がこれまで見たことのないような目で灯里を見つめていた。


いつも冷静な透明感のある瞳に、炎のような何かが揺らめいている。

灯里は背を強張らせ、呆然とその瞳を見つめた。


「晃くんって……誰? フルネームは何?」

「……っ」

「まさかと思うけど……」


玲士の瞳がぎろりと射抜くように灯里を見る。

……まずい。


灯里はとっさに立ち上がり、椅子を蹴って駆け出した。

腕を掴もうとした玲士の手をぶんと払いのけ、休憩室を駆け出る。

明らかに不自然な態度だが晃人のことを知られるわけにはいかない。

灯里はそのまま電機設備課の方へと駆けていった……。



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