悪魔のようなアナタ【完】
<side.玲士>
灯里が去った後。
「……っ……」
玲士は灯里を掴み損ねた手を下ろし、軽く舌打ちした。
ふとテーブルの上を見ると、灯里が残していった缶コーヒーが目に入る。
缶コーヒーの飲み口には灯里のグロスの跡がうっすらと残っている。
玲士は指を伸ばし、そっと缶コーヒーを取り上げた。
コーヒーはまだ1/3ほど残っている。
玲士はそのまま缶を傾け、一気に飲み干した。
灯里が残したコーヒーはかすかに甘い。
コーヒーの甘さだとわかってはいても、この甘さが灯里の唇の甘さのように思えてしまう……。
「晃くん、か……」