悪魔のようなアナタ【完】
三章
1.悪魔の特訓
翌日の昼過ぎ。
灯里は印刷した資料を片手にパソコンに向かっていた。
灯里以外の課員は全員外出しており、直帰予定だ。
昨日はあれからあまり捗らず、ほとんど進捗はなかった。
――――このままでは、まずい。
と、パソコンの画面を見つめていると……。
「灯里」
聞き覚えのあるテノールの声に灯里はぴくりと眉を上げた。
振り向いた灯里の目に玲士の姿が映る。
玲士はいつになくにこやかな笑みを浮かべて灯里を見つめている。
灯里は思わずゾッとし視線を逸らした。
――――何だかイヤな予感がする。
これは魔性の笑みだ、気を取られてはいけない。
灯里は気付かなかったフリをしパソコンに向き直ったが、玲士はすたすたと灯里の机の横に歩いてきた。
「おれを無視するなんて、お前もずいぶん偉くなったもんだね?」
「……っ」
「お前のその図太さに免じて。助けてやるよ、灯里」
「……は?」