悪魔のようなアナタ【完】
玲士の言葉に、灯里は思わずぽかんと彼を見上げた。
今、助けてやると聞いたような気が……。
空耳か?と思った灯里の耳を指先でぐっと掴み、玲士は形の良い唇を寄せる。
「だから。助けてやるって言ってるの、おれが」
「……え?」
「来月の電機産業展の資料、作ってるんでしょ?」
「……っ、水澤くん……」
「定時後、奥の会議室にパソコン持ってきて。時間厳守。いいね?」
玲士は言い、ぽいと灯里の耳を離した。
そのまま背を向けてすたすたと廊下へと歩いていく。
悪魔が助けてくれる、なんて……。
悪魔の慈悲だろうか、もしくはボランティアか?
――――どちらにしても何だか良くない予感がする。
灯里はぽかんとその背を見つめていた……。