悪魔のようなアナタ【完】
――――20時過ぎ。
灯里は必死の表情でパチパチとキーボードを叩いていた。
「なんでなのっ……」
灯里は手を止め、思わず頭を抱え込んだ。
エクセルで数値を写しているだけなのだが、写し終えてもなぜか合計が合わない。
玲士が持ってきたのは4月からの予算と実績を管理するための資料だ。
経営企画室に所属している玲士の仕事は、予算実績管理や経営会議のための資料作成など多岐に渡る。
灯里が修正しているのは電機設備課の予算実績資料で、3月末に各課ごとに経営企画室に提出したものだ。
「うーっ……」
どんどん時間だけが過ぎていく。
灯里は焦って室内を見回した。
他の部署の人はもう全員帰宅し、フロアには灯里しかいない。
エアコンが切れた室内は4月下旬といえどどことなく肌寒い。
灯里は椅子の背にかかっていた紺のパーカーを着込み、再びパソコンに向き直った。
やり方が間違っているのかもしれない……。
と灯里が頭を抱え込んだ時。
「おれをいつまで待たせる気?」