悪魔のようなアナタ【完】



<side.美奈>



灯里の背があっという間に廊下の向うへと消えていく。

その後ろ姿を美奈はぽかんと眺めていた。

はっきり言って尋常な様子ではない。

話の内容からするに、昨日玲士と何かあったらしいが……。


ふと玲士を見ると、玲士は楽しげな表情で灯里が消えた方向を見つめている。

その表情を見、美奈は胸に黒いものが広がる気がした。


玲士は大学の頃から憧れていた先輩だ。

付き合っていたわけではなく美奈の一方的な片思いだが、ずっと玲士を見つめていた。

会社で出会ったのは偶然だが、美奈はその再会に運命を感じていた。

なのに……。


「水澤先輩……」

「なんだ?」

「水澤先輩と吉倉先輩は、どういう関係なんですか?」


美奈の言葉に玲士はすっと笑みを消した。

氷のように冷たい視線が美奈を見下ろす。

そして続いたブリザードの言葉に美奈は喉を詰まらせた。


< 71 / 350 >

この作品をシェア

pagetop