悪魔のようなアナタ【完】
<side.美奈>
灯里の背があっという間に廊下の向うへと消えていく。
その後ろ姿を美奈はぽかんと眺めていた。
はっきり言って尋常な様子ではない。
話の内容からするに、昨日玲士と何かあったらしいが……。
ふと玲士を見ると、玲士は楽しげな表情で灯里が消えた方向を見つめている。
その表情を見、美奈は胸に黒いものが広がる気がした。
玲士は大学の頃から憧れていた先輩だ。
付き合っていたわけではなく美奈の一方的な片思いだが、ずっと玲士を見つめていた。
会社で出会ったのは偶然だが、美奈はその再会に運命を感じていた。
なのに……。
「水澤先輩……」
「なんだ?」
「水澤先輩と吉倉先輩は、どういう関係なんですか?」
美奈の言葉に玲士はすっと笑みを消した。
氷のように冷たい視線が美奈を見下ろす。
そして続いたブリザードの言葉に美奈は喉を詰まらせた。