悪魔のようなアナタ【完】




「お前に関係あるの? それ」

「……っ」

「そんなこと考えている暇があったら、もっと別のこと考えたら?」


玲士は言い捨て、踵を返して休憩室を出ていく。

取り付くしまもない冷たさに美奈は唇を噛んだ。

灯里にはあんな視線を向けていたのに、なぜ……。


「……っ、……」


思い返せば、玲士は灯里のことを『吉倉』ではなく『灯里』と呼んでいる。

社内で玲士が下の名前で呼ぶのは彼女だけだ。

彼女はそんなことは気にもしていないのだろうが……。


黒いものがどんどん胸に広がっていく。

美奈は胸元に手を当て、それを抑え込むようにぐっと手を握りしめた……。



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