悪魔のようなアナタ【完】
涙を流す灯里に玲士は厳しい声で次々と指示を飛ばす。
玲士の言葉は厳しいが、灯里を見つめるその目は決して冷たくはない。
むしろ見守るような優しさがその瞳にはある。
「……灯里……」
10年前まで、灯里を見守ってきたのは自分だった。
――――7歳年下の幼馴染。
物心ついたときから、晃人が灯里に寄せていた淡く優しい想い……。
それが黒く塗りつぶされるような気がして、晃人はぐっと目を瞑った。
今、自分は灯里の上司だ。
ただの幼馴染だった昔とは違う。
守るべき家があり、守るべき婚約者がいる。
「……っ」
晃人は手を拳に握りしめ、会議室に背を向けた。
――――これ以上考えてはいけない。
自らにそう言い聞かせ、静かに廊下を後にした……。
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