悪魔のようなアナタ【完】
「あの資料、かなり良くできていた。この短期間であれだけの物を作るには、お前も相当辛い思いをしたんじゃないのか?」
「……っ」
「お前の努力があの資料から伝わってきた。頑張ったな、灯里」
晃人は優しい、見守るような瞳で灯里を見る。
灯里は昔と変わらぬその温かさに胸が熱くなるのを感じた。
晃人があの地獄の二日間を知っているとは思えない。
けれど晃人の言葉は灯里の心の弱っている部分を的確に突いた。
ずっと離れていたのに、やはり晃人にとっては自分のことなどすべてお見通しらしい。
「晃くん……」
「灯里」
晃人の手がそっと灯里の頬に触れ、涙を優しく拭う。
灯里は一瞬体を強張らせたが、懐かしい晃人の手の感触にさらに涙が溢れ出した。
――――大きくて温かい、晃人の手。
昔からこの手に包まれると、辛いことも嫌なことも忘れられるような気がした。
「晃くん……」